よろずの森

とある診察室から

読書記録「頭のいい人が話す前にかんがえていること」

「頭のいい人」は、周囲から信頼され、意見を受け入れてもらえる。

※単に知識があるではない、頭の良し悪しは相手が決める

 

「頭のいい人」とは、

態度:相手ファースト(相手の承認欲求を高める)

聞く:傾聴、整理、具体的に質問(過去と仮定、状況、行動、結果)、深く理解

・自分ではなく相手が話したいこと

・肯定も否定もしない(矛盾点・一般論をはさむ)

・こうしたいと決まっていればそれを促し、迷っているのであれば聞くのみ

・自分なりの仮説をもって聞く

話す:根拠に基づく、事実と意見・感想を区別(整理)、再定義、「ないもの」を言語化

 

☆所感

いくら知識や問題・課題解決能力があっても、相手ファーストな「話し方」や「聞き方」ができなければ、信頼に繋がらない。個人のみで身につけられる知識・能力には限りがある。他者から信頼を得ることで、自身の範囲外のことであっても他者から学び続けることができる。

新・家庭医療専門医試験と総合診療専門医試験

私が受験した2023年度の新・家庭医療専門医試験についてです。そして、最後に総合診療専門医試験にも少し触れています。

 

まず新・家庭医療専門医試験について

日程の確認ですが、以下になります。

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新・家庭医療専門医試験

【臨床実技試験CSAおよび筆記試験】
日時:2023年7月22日(土)・23日(日)

場所:国際医療福祉大学 成田キャンパス(千葉県成田市公津の杜4-3)

ポートフォリオ口頭試問】
日時:2023年7月17日(月・祝)

開催方法:自宅(or職場)でオンライン試験(Zoom)

→結果発表:2023年9月下旬頃(合否通知が届いたのは10月3日)

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【重要な試験対策】

受験生LINEグループに入る(総合診療・家庭医療共通)

 → LINEオープンチャットで「2024総診・家庭医専門医試験」と検索しましょう。

★専門医部会の総合診療/新家庭医療専門医試験対策座談会に参加

 (2023年6月20日開催、約1ヶ月前)

★筆記試験の過去問、専門医更新の問題を入手(LINEチャット、指導医より)

★学会のHPにある、試験の概要・講評(https://www.primary-care.or.jp/nintei/index_fp.php)を確認

※研修期間中はまずポートフォリオ作成が第一です。試験対策は研修修了後で全く問題ありません。

 

【臨床実技試験CSAおよび筆記試験】

・来年以降も受験場は変更ないでしょう(交通の便が良い、設備が充実)。成田駅から少し歩くと鰻屋さんが多いのですが、川豊本店がおすすめ。お土産はピーナッツ最中一択でしょう。

・2日間とも午前がCSA、午後が筆記試験(100問100分)という流れ。

・30-40人ほどのグループに分けられ、それぞれ集合時間が異なる。

 

(臨床実技試験CSA)

・試験時には白衣、もしくはスクラブが必要

・一つ終わると、すぐ次のシナリオへ移動するため、間隔は短め。余韻に浸っていたり、次のシナリオのことを考える暇がない。入室したら目の前に患者さんがいて試験開始まで待機。10分間の試験開始後は事例の問題文を読み、自分のタイミングで診察を始める。実際の外来診療のようなイメージ。問題文は長く、1分弱は必ずかかるので、実際の診察は9分間。

対策は、自身の研修プログラムで行っている臨床技能評価やシナリオ学習の復習で十分でした。

・CSAは普段の診療以上は出来ません。普段通りにやれば大丈夫だと思います。

・CSAでは毎回、笑顔で「本日担当します〇〇です。よろしくお願いします」と、模擬患者さんの心証を良くしましょう。

 

(筆記試験)

・対策は1-3ヶ月前から始める人が多いとのこと。

・対策していれば全く難しくはないです。普段の臨床で何気なく行っていることが問われる印象(CHADS2、A-DROP、CURB-65、ABCD2、qSOFAなどの各種スコア、出席停止期間、予防接種など)。オピオイドなど緩和ケアも。

過去問・専門医更新試験の問題を中心に勉強すると良いでしょう。また、市販の問題集(外来診療ドリル、内科専門医問題集・総合内科ドリルのどちらか)を取り組む良い機会になります。

 

ポートフォリオ口頭試問】

・提出したポートフォリオのうち、2つの事例がランダムに選ばれます。

特別な対策は不要。ポートフォリオの印刷と1分間のまとめを作成、前日に内容を見直す程度で良いでしょう。

・難しいことは聞かれず、事例に関して指導医と振り返りを行う感じ。

 

※総合診療専門医試験について

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総合診療専門医試験

【筆記試験(CBT)】

日時:2023年10月1日(日)

場所:全国各地のCBT会場を事前に予約

【面接試験】

日時:2023年10月8日(日)または15日(日)

開催方法:自宅(or職場)でオンライン試験(Zoom)

→結果発表:2023年12月20日(一次審査(筆記試験・面接試験の結果))、1月22日(二次審査(正式な発表))

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・家庭医療専門医と総合診療専門医の対策は基本的に同じと考えて良いでしょう。

・筆記試験と口頭試問はありますが、CSAはありませんでした

・筆記試験ですが、過去問などは専攻医のLINEチャット内にあります。家庭医療専門医試験よりも筆記試験は手強いですが、過去問と内科問題集を真面目に取り組んでいれば受かると思います。またCBT(Computer Based Testing)なので、めっちゃ疲れます。

・口頭試問は、新・家庭医療専門医試験より内科的な部分を問われた気がしますが、特別な対策は不要でしょう。

専門医取得!!

今年、総合診療専門医、新・家庭医療専門医を取得しました!!

 

医学生・初期研修医だった頃を思い出すと(ついこの間だった気がする)、

専門医取得なんて雲の上のレベルで、先が長い道のりだなんて思っていましたが、

時が流れるのはあっという間ですね。

 

基本領域である総合診療専門医、サブスペシャリティの新・家庭医療専門医の研修を同時進行で4年間で終えました。総合診療、内科(消化器内科含む)、小児科、救急科の病院研修を2年間、診療所研修を2年間行いました。

 

総合診療研修は「多様な場所(病院、診療所、在宅)で多様性のある患者をケアできる」ようになることが目標とされており、家庭医療研修は「“家庭医療”という学問を深める(どちらかといえば、地域の診療所で力を発揮していく)」ことを目標とされています。まあ、特に研修内容が大きく変わることはないんですけども。

 

大変だったのが、家庭医療研修で必須とされるポートフォリオ作成。。。

※総合診療研修でも同じく求められますが、家庭医療よりもだいぶ緩い。

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ポートフォリオの領域​

1. 未分化な健康問題
2. 予防医学と健康増進
3. 慢性疾患のケア
4. 多疾患併存
5. 長期的な全人的関係に基づくケア
6. 患者中心の医療
7. 家族志向のケア
8. 地域志向のプライマリ・ケア
9. 障害とリハビリテーション
10. 臨床における教育と指導

11. EBMの実践
12. チーム医療・ケアの調整や移行
13. システムに基づく診療
14. メンタルヘルス
15. 健康の社会的決定要因とアドボカシーおよびアクセス

16. 医療者自身のケア

【以下はa、bでいずれかの領域を選ぶ形】
17a. 複雑困難事例のケア 

17b. 統合されたケア
18a. 高いプロフェッショナリズムに基づく行動

18b. 倫理的に困難な意思決定を伴う事例のケア
19a. セクシャルヘルス/性を考慮したケア

19b. 思春期のケア
20a. 緩和ケア

20b. 人生の最終段階におけるケア

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全部で20事例作成しなきゃいけないんですけども、家庭医療研修のポートフォリオは書き方が独特なんです。客観的事実と文献的考察を記載する内科の症例報告とは違って、主観的要素や内面的な葛藤、対患者・家族もしくは対医療職とのコミュニケーションといった要素も含めていくんです。報告者の視点で、「事例で感じた困難をいかにして受け止め、他者との関わりの中でどのように乗り越えていったか」、「その事例を自身でどう意味付けをして、次にどう活かしていくのか」を書いていきます。自分1人だけで書くのは難しく、しっかりとした研修プログラムの中で家庭医療専門医である指導医とのディスカッション・サポートを得る必要があると思いました。

 

日常の診療だけでなく、周囲の人を巻き込みながら、院内外で何かしらの取り組みを行う必要もありました。「8. 地域志向のプライマリ・ケア」、「13. システムに基づく診療」、「15. 健康の社会的決定要因とアドボカシーおよびアクセス」、「16. 医療者自身のケア」がそうですね。

 

私の場合は、

8. 地域志向のプライマリ・ケア」

→地域のHPVワクチン接種率向上のための院内外の取り組み

13. システムに基づく診療」

→院内の糖尿病患者の眼科受診率向上のための取り組み

「15. 健康の社会的決定要因とアドボカシーおよびアクセス」

→LGBTQにフレンドリーな病院づくりのための交流会とアドボカシー活動

16. 医療者自身のケア」

→退屈症候群に陥った経験から、院内のワーク・エンゲージメントを高める取り組み

といった感じです。

 

ほとんどの専攻医にとって、同じ診療現場で働く期間が半年~1-2年であると思いますし、短期間で課題発見から情報収集、さらに取り組みまで行うのは、今考えても難しいよなぁと思います。

 

ポートフォリオさえかければ、家庭医療専門医はほぼ合格と思って間違いないと思いますが、実際には20事例書ききれない人、最初から諦めて総合診療研修までで留める人も多いじゃないかなと思います。

 

総合診療専門医のみだろうが、家庭医療専門医まで持っていようが、専攻医教育に携わらない限り、あまり実益はないと思いますがどうなんでしょう。家庭医療専門医の更新には5年毎にポートフォリオを書き続けなければならず、それは面倒くさいなと思いつつ、医師としてのアイデンティティである「家庭医療」を手放す(?)こともなんだか惜しいなぁという気持ちですね。

日本では稀な家庭医事情

「そもそも家庭医とは何??」

赤ちゃんからお年寄りの健康問題、医療から介護福祉のことまで、なんでも相談できるドクターのことを指します。

家庭医は患者の相談のうち、8割は対応可能であると言われていますが、もちろんすべての病気や相談を解決できる訳ではありません。「最初の相談役」となることで、必要に応じて周囲の専門医療機関への紹介をしたり、地域の医療資源、多職種と連携しながらケアにあたっていく、ということですね。

 

日本には地域で開業されている「かかりつけ医」は多くいますが、海外諸国(イギリス、オランダ、カナダ、オーストラリア・・・)とは異なり、家庭医療について専門的に研修を行った「家庭医」はまだまだ少ないのが現状です。

その理由として医療制度の違い(海外諸国では家庭医登録制である(まず自分の家庭医への相談が必要)一方で、日本はフリーアクセス(好きな病院に自由に受診できる))、日本における家庭医研修の土壌がない、歴史が浅いなどでしょうか。

 

現状、多くの「かかりつけ医」は特定の専門医(内科、外科、小児科、整形外科・・・)ではあるけれども、開業医として地域住民の様々な健康問題を扱う特別な研修を受けてきた訳ではなく、個々に経験を積み上げることで対応していることがほとんどなんですよね。

特別それが悪いという訳ではないですが、不都合が生じるのも確かです。患者さんによっては通院先が多岐にわたって(血圧は内科、腰・膝は整形、子供のアレルギーは小児科など)、通院が大変になる、薬が多くなることが多々あります。また、自分の困った症状について「自己診断」してから通院先を決めるということにもなりますよね。

 

「家庭医」は地域住民の「かかりつけ医」となるべく、都市部や山間地域にて病棟や診療所、在宅診療を経験することで、年齢や性別問わず、総合的に医療を学んでいく専門研修を受けています。加えて、「家庭医」は他の専門医や医療職、他業界も含めた多職種連携をとても重要視していることが特徴でもあります。

 

個人的には、将来もっと日本にも「家庭医」が増えていけばいいなと思っています。

 

※ちなみに「総合診療医」という言い方もあります。「総合診療医」はより広い意味に捉えられ、診療科に拘らず、働く地域のニーズや医療機関の機能に応じて多種多様に活躍できる医師のことを指します。そして「総合診療医」は、診療所で働く「家庭医」と病院で働く「病院総合医」に大別されます。

はじめの一歩

はじめまして!

私は家庭医(総合診療専門医、家庭医療専門医)として、東北のクリニックに勤務しています。普段は外来診療、訪問診療のほか、地域の産業医や学校医もしています。

 

目標は、

①地域一番のファミリークリニックにすること

②地域のSDH(社会的決定要因)の解決に取り組むこと

③地域に不可欠な医療インフラとして根付き「幸せなまちづくり」に貢献すること

 

目標は今後変わっていくこともあるかもしれませんが、できることを日々やっていこうと思います。ブログでは、読書記録、仕事や職場、自身の勉強や活動、日々の気づきや感じたことなど、色々書いていこうと思います。

 

それでは、よろしくお願いします。