よろずの森

とある診察室から

日本では稀な家庭医事情

「そもそも家庭医とは何??」

赤ちゃんからお年寄りの健康問題、医療から介護福祉のことまで、なんでも相談できるドクターのことを指します。

家庭医は患者の相談のうち、8割は対応可能であると言われていますが、もちろんすべての病気や相談を解決できる訳ではありません。「最初の相談役」となることで、必要に応じて周囲の専門医療機関への紹介をしたり、地域の医療資源、多職種と連携しながらケアにあたっていく、ということですね。

 

日本には地域で開業されている「かかりつけ医」は多くいますが、海外諸国(イギリス、オランダ、カナダ、オーストラリア・・・)とは異なり、家庭医療について専門的に研修を行った「家庭医」はまだまだ少ないのが現状です。

その理由として医療制度の違い(海外諸国では家庭医登録制である(まず自分の家庭医への相談が必要)一方で、日本はフリーアクセス(好きな病院に自由に受診できる))、日本における家庭医研修の土壌がない、歴史が浅いなどでしょうか。

 

現状、多くの「かかりつけ医」は特定の専門医(内科、外科、小児科、整形外科・・・)ではあるけれども、開業医として地域住民の様々な健康問題を扱う特別な研修を受けてきた訳ではなく、個々に経験を積み上げることで対応していることがほとんどなんですよね。

特別それが悪いという訳ではないですが、不都合が生じるのも確かです。患者さんによっては通院先が多岐にわたって(血圧は内科、腰・膝は整形、子供のアレルギーは小児科など)、通院が大変になる、薬が多くなることが多々あります。また、自分の困った症状について「自己診断」してから通院先を決めるということにもなりますよね。

 

「家庭医」は地域住民の「かかりつけ医」となるべく、都市部や山間地域にて病棟や診療所、在宅診療を経験することで、年齢や性別問わず、総合的に医療を学んでいく専門研修を受けています。加えて、「家庭医」は他の専門医や医療職、他業界も含めた多職種連携をとても重要視していることが特徴でもあります。

 

個人的には、将来もっと日本にも「家庭医」が増えていけばいいなと思っています。

 

※ちなみに「総合診療医」という言い方もあります。「総合診療医」はより広い意味に捉えられ、診療科に拘らず、働く地域のニーズや医療機関の機能に応じて多種多様に活躍できる医師のことを指します。そして「総合診療医」は、診療所で働く「家庭医」と病院で働く「病院総合医」に大別されます。