よろずの森

とある診察室から

専門医取得!!

今年、総合診療専門医、新・家庭医療専門医を取得しました!!

 

医学生・初期研修医だった頃を思い出すと(ついこの間だった気がする)、

専門医取得なんて雲の上のレベルで、先が長い道のりだなんて思っていましたが、

時が流れるのはあっという間ですね。

 

基本領域である総合診療専門医、サブスペシャリティの新・家庭医療専門医の研修を同時進行で4年間で終えました。総合診療、内科(消化器内科含む)、小児科、救急科の病院研修を2年間、診療所研修を2年間行いました。

 

総合診療研修は「多様な場所(病院、診療所、在宅)で多様性のある患者をケアできる」ようになることが目標とされており、家庭医療研修は「“家庭医療”という学問を深める(どちらかといえば、地域の診療所で力を発揮していく)」ことを目標とされています。まあ、特に研修内容が大きく変わることはないんですけども。

 

大変だったのが、家庭医療研修で必須とされるポートフォリオ作成。。。

※総合診療研修でも同じく求められますが、家庭医療よりもだいぶ緩い。

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ポートフォリオの領域​

1. 未分化な健康問題
2. 予防医学と健康増進
3. 慢性疾患のケア
4. 多疾患併存
5. 長期的な全人的関係に基づくケア
6. 患者中心の医療
7. 家族志向のケア
8. 地域志向のプライマリ・ケア
9. 障害とリハビリテーション
10. 臨床における教育と指導

11. EBMの実践
12. チーム医療・ケアの調整や移行
13. システムに基づく診療
14. メンタルヘルス
15. 健康の社会的決定要因とアドボカシーおよびアクセス

16. 医療者自身のケア

【以下はa、bでいずれかの領域を選ぶ形】
17a. 複雑困難事例のケア 

17b. 統合されたケア
18a. 高いプロフェッショナリズムに基づく行動

18b. 倫理的に困難な意思決定を伴う事例のケア
19a. セクシャルヘルス/性を考慮したケア

19b. 思春期のケア
20a. 緩和ケア

20b. 人生の最終段階におけるケア

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全部で20事例作成しなきゃいけないんですけども、家庭医療研修のポートフォリオは書き方が独特なんです。客観的事実と文献的考察を記載する内科の症例報告とは違って、主観的要素や内面的な葛藤、対患者・家族もしくは対医療職とのコミュニケーションといった要素も含めていくんです。報告者の視点で、「事例で感じた困難をいかにして受け止め、他者との関わりの中でどのように乗り越えていったか」、「その事例を自身でどう意味付けをして、次にどう活かしていくのか」を書いていきます。自分1人だけで書くのは難しく、しっかりとした研修プログラムの中で家庭医療専門医である指導医とのディスカッション・サポートを得る必要があると思いました。

 

日常の診療だけでなく、周囲の人を巻き込みながら、院内外で何かしらの取り組みを行う必要もありました。「8. 地域志向のプライマリ・ケア」、「13. システムに基づく診療」、「15. 健康の社会的決定要因とアドボカシーおよびアクセス」、「16. 医療者自身のケア」がそうですね。

 

私の場合は、

8. 地域志向のプライマリ・ケア」

→地域のHPVワクチン接種率向上のための院内外の取り組み

13. システムに基づく診療」

→院内の糖尿病患者の眼科受診率向上のための取り組み

「15. 健康の社会的決定要因とアドボカシーおよびアクセス」

→LGBTQにフレンドリーな病院づくりのための交流会とアドボカシー活動

16. 医療者自身のケア」

→退屈症候群に陥った経験から、院内のワーク・エンゲージメントを高める取り組み

といった感じです。

 

ほとんどの専攻医にとって、同じ診療現場で働く期間が半年~1-2年であると思いますし、短期間で課題発見から情報収集、さらに取り組みまで行うのは、今考えても難しいよなぁと思います。

 

ポートフォリオさえかければ、家庭医療専門医はほぼ合格と思って間違いないと思いますが、実際には20事例書ききれない人、最初から諦めて総合診療研修までで留める人も多いじゃないかなと思います。

 

総合診療専門医のみだろうが、家庭医療専門医まで持っていようが、専攻医教育に携わらない限り、あまり実益はないと思いますがどうなんでしょう。家庭医療専門医の更新には5年毎にポートフォリオを書き続けなければならず、それは面倒くさいなと思いつつ、医師としてのアイデンティティである「家庭医療」を手放す(?)こともなんだか惜しいなぁという気持ちですね。